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中高年とは?/ アットローン

[ 1043] 座談会・アンケート調査にみる中高年のセクシュアリティ
[引用サイト]  http://www.medical-tribune.co.jp/ss/2000-7-25/7ss1.htm

荒木 今回の調査の背景を説明しますと,私個人が90年に60歳から91歳までの男女のセクシュアリティ調査をしたことあります。その結果から,セクシュアリティに関する男女の性差がわかり,中高年の男女がいい性関係をもつのはむずかしいなと思わされて,でもその関係性を変えていく余地があるんではないかと感じていました。
その後97年にも30代から60代までの女性を対象に調査をしてみたんです。そこでもやはり閉経を境に性関係から遠ざかっていく……配偶者とのよいコミュニケーションのないまま性関係から遠ざかっていく,そうした実態がうかがえました。
この調査結果を,日本性科学会の症例研究会の場でみなさんにお話しすると,「おもしろいな,もっと大々的な調査を」と盛り上がって(笑),日本性教育協会の学術研究補助金をいただけることにもなって今回の調査が行われたというのが大まかな経緯です。
荒木 調査項目は多岐にわたっていますので,細かな分析はまだ終わっていません。今日は特に男女の差異が現れた項目を取り上げてお話ししていきたいと思います。
以前の調査では男女に10歳ぐらいの差がありました。今回の調査では,「夫婦間の性交渉」と限定して聞いていますが,前回の調査ではそれを限定しなかったので「婚外交渉」が入ってきたのかなと想像されます。実際に今回の調査で「婚外交渉」を尋ねてみると(図3),男性のほうは40代,50代,60代とも,だいたい10%ほどあります。
針間 アンケートの質問がうまかったから,本音が出てきたのかもしれませんね。質問票をみると,まず「あなたはこの1年間に,配偶者以外の異性との親密なつき合いがありましたか」と聞いて,その後「それは性交渉を伴いますか」ですから。
性交痛の有無をみますと,それ自体は60代のほうがふえるけれど,痛みと性交の満足度のどちらが大きいかを尋ねると,痛みのほうが大きいと答えた方が一番多いのは50代後半の女性なんです。おそらくそこで性交渉をやめていく。夫婦間のコミュニケーション不足が目立つのも50代後半です。
荒木 「性欲の有無」も性差の違いが目立つ項目です。女性は50代の前半から後半にかけてガタッと落ちます。「ほとんどない」が40%ほど。男性のほうは60代の前半から後半にかけて低下が目立ちます。
そのへんは「どのような性的関係を望むか」という質問への回答によく出てると思えます。男性のほうは「性交渉をもつ」が多くて,60代の後半になっても半数近くがそう答えます(図4)。でも女性で「性交渉をもちたい」との答えが半数を超えるのは40代の前半だけなんですよね(図5)。
ところが女性のほうは身体的な更年期がメンタルにも影響する。それを乗り越えてまで性交渉を続けようとするモチベーションがあるか,ないか。
身体的な変化に対応してまでという意欲はやっぱり薄いし,だからこそ痛みがふえて,もうしたくない。けれども精神的なつながりはほしいから,「性交渉」+「愛撫」というところまで入れると60代でも40%近くまでは行くのかなと,読めるんですけど。
それと,これは数字には出てきませんけれど,身体的な転換点に至る手前のところで,すでにそういう関係を放棄しつつある方がたくさんいて,それは実は妊娠・出産から始まっているんです。男性のほうは,全体的な体力の低下と,あとはパートナーの変化に少し引きずられる……というふうに,更年期外来をやっていて感じますね。
更年期外来にはいろいろな症状でこられるわけですけど,最後の最後のほうで「たまにしかないんですけど,痛いんですよね」という話がポロッと出る。「じゃ,こういう方法がありますよ」って,アンケートにもあるゼリーだとかホルモン補充療法の話をしても,乗ってこないタイプの人のほうが多いんです。
荒木 50代後半の性交痛のある女性で「ゼリーを使って続けたい」という回答は少ない。半数以上はもう続けたくないんです(笑)。
「性欲」がなんなのか,ということが一般的に言ってわかりにくいですね。「性欲がありますか」と聞かれた女性が,自分の性欲とは何かをよく分かっていなくて,例えば「だんなと仲いいですか」と聞かれて条件反射的に「はい」と答えるように,「性欲がありますか」「ありません」と答えるようなーー社会的反射というか条件づけがあるような気がしますね。
早乙女先生が産婦人科の立場で体のことを言われたから,精神科として(笑)心のことを言いますと,閉経によって体の変化はあるでしょうけど,それによって,もともといやだったから「おつとめ,ごめん」になる。痛いとか気持ちよくないとか,一方的だとか,ネガティブな性交があったけど,それまでは断る口実がなかった。
社会的な背景を勝手に推測してしまいますと,定年を迎えたダンナは,これを機会に夫婦仲良くやり直したいなんて思う。だけど奥さんのほうはダンナが家のなかにいるだけでも鬱陶しい。そしてダンナが仕事をしなくなったわけだから「私だって,もうおつとめをしなくていい」(一同,爆笑)。いや,本当にそうですよ。
編集部 閉経になると妊娠の不安もないからセックスはよくなるんだろうと期待してたんです。調査結果にガッカリしているんですが(笑)。
荒木 一部の女性たちはそういう人たちもいるんです。97年の調査では10数%の女性たちは以前よりよくなったと回答してます。それまでに,いい性関係をもってた人たちは,本当に解放されて楽しめる。
針間 年代別な分析をするには,加齢そのものの問題と,それぞれの時代背景,そして関係性の積み重ねと,この3つチェックが必要になりますね。
荒木 関係性の積み重ねのことでいうと,性交渉にかける時間がね(図6)。「5分以内」「10分程度」が,こんなに多いわけです。これは男性だけが満足するセックスでしょう。年齢につれてより短くなるんですよ。
荒木 そしてさらに考えさせられるのは,「性生活に関して相手に望むこと」を聞くと,女性は時間をかけてほしいとは言っていないんですよ(図7)。いまのようなセックスで時間をかけられても,かなわないということで(笑),女性好みの,女性にフィットする形で時間をかけられればいいんでしょうけれど。
「性的コミュニケーションがありますか」と女性に聞くと(図8),「伝え合っている」は40代前半で半数を超えるだけで,あとは半数に満たず年齢とともに減少する。「伝え合わない」「夫からのみ」が多いんです。このへんの問題も大きそうです。
早乙女 性交痛については,“二人で話し合ってうまくいかないから病院に行って来る”にはなりませんね。婦人科に来ていろいろ話しているうちに,“そういえば,夫婦生活もうまくいっていないんですけど”っていう話は最後にならないと出ませんから。
欧米では,うまくいかなくなると,まずホルモン補充療法を相談するという話を聞いたことがあります。日本では重要視していないわけではないけれども,コミュニケーションが取れていない。その延長線上に更年期の問題がある。もともと,あまり口にしない。
荒木 97年の調査の自由記入欄に30代や40代の方でも,性的なことを夫と話したいけど,ちょっと恥ずかしいと書いていました。
早乙女 最近あちこちで言っているんですけど,いまの40代,50代は結婚してからセックスがある時代なんです。
30代ぐらいから価値観がちょっと崩れ始めて「できちゃった結婚」がポピュラーになりつつあったけれど,でも20代や10代は結婚とセックスが結びついていないとさえいえる。私は30代でもそのはざまで,古いほうのタイプに属してる(笑)。
針間 30代では恋愛と結婚とセックスがつながっているけれど,でも20代になるとつながっていない。へたすると恋愛もセックスとつながらない。
荒木 私は短大で教えていて,女子学生に簡単なアンケートをとってみると,「愛があれば,いい」という回答がほとんど。10年ぐらい前までは「やはり結婚が前提」がある程度あったけれど,それがいまは全然なくなってるの。
早乙女 いまの30代あたりから,なんで変わってきたのか,それがよく分からないんです。考えてみると,75年から85年が「国際婦人の10年」といって,そこでいろんな活動があった。「優生保護法」の改悪とか,男女の雇用に関することだとかも出てきた。
そこから後の世代はそうした流れの影響を多少とも受けているんじゃないかなと思ってます。子供に対する教育効果は10年後,20年後に出ますから。
その10年前の60年代に生まれたのが私の世代で,高度成長期の物質に偏った時代なんです。企業も夫婦には子供二人か三人に手厚い保障を与え,家電製品もどんどん普及してくる。結婚した女性は「核家族」のなかでの主婦として安定していた。これらの社会的背景がそれぞれに影響しているんでしょうね。
早乙女 年齢がある程度になると,新しい出会いは期待できにくいから,だからこそ限られた資源のなかで(笑),それをどう改善していくのか,それをみるためにはとても重要な調査だと思うんですよ。それを若い人にも伝えたいという気がする。パートナーさえ替えればいい,というのでなく。
荒木 そのためにも,やっぱり中高年が自分たちの性についてよく知るということ,それが大事だと思うんです。
性についての考え方でも,男性がリードするものという回答が目立ちますね。男性は40%,女性も35%がそう考えている。「応じるのが妻の役割」というのも,三人に一人ぐらいがそう思っていますよね。そして女性は5人に1人が「女性から求めるのは恥ずかしい」と思っているし。
荒木 だから,いろんな形で女性は強くなったとか対等になったとか言われても,性関係ではまだまだ対等でなくて,女性のほうが非常に従属的だなって感じますね。
編集部 このオンラインマガジンの7月号の対談では,上野千鶴子さんが,「関係のなかで不可逆的な変化が起きているなら,それを修復しようとするのは問題の立て方が間違っている」という趣旨のことを言ってます……セックスというのは人間関係全体だから,中高年になってから変えようがないと思ってしまうんですが,どうでしょう?
針間 仕事のなかで最近考えさせられるのは,夫婦に限りませんが,一つの出来事を二人がいかに違った見方をするか,なんです。どちらの見方も間違ってはいないんですが。
例えば,中高年の話ではなくなりますが,夫が「自分は仕事から疲れて帰ってきても,30分も子供の相手をしている。なんていいお父さんなんだろう」と思うのに対して,妻からすると「30分しか」になりかねない。「30分」という事実は同じでも,コミュニケーションがないと,そうなるんです。
荒木 以前に50代の主婦からインタビューを受ける機会があって,「男性は60代になっても性欲がある」といったら,「まあ,いやだわ」って,ちょっと肩をさわられるのもイヤだって言ってました。「私のまわりは結構そういう女性が多い」とも。洗濯物も分けるっていってましたし。
「どうして,そこまで?」と聞くと「これまで自分が子育てやなんかでずっーと大変なときも,夫は向き合ってくれなかった。自分が呼びかけたとき,仕事,仕事で」と言ってましたよ。それの積み重ねでしょうね。取材に同席していたカメラマンが定年後にフリーになった方で,「そりゃ奥さん,いくらなんでも」って,口をはさんでいましたよ(笑)。
早乙女 でも,男性って可哀想だなと思うところもありますね。女性は自分の体の変化をわかってたとしてもーー月経周期ひとつを取っても男性にはなかなか分かりにくい。
出産があって子育てがあって,閉経もあって,そうした体の変化を実は女性自身がよく分かっていないのが現実ですから,うまく伝えられなくて,イライラだけぶつけるから,男性は逃げるだけしかない,と思うんです。
これに対して男性はストレートに,したい時にはしたいと,はっきりしていて,ところが女性は揺れが大きいので,そのギャップではないのかと思うんです。女性の側がもう少し物の言い方を工夫すれば……男性の肩を持つ気は全然ありませんけどね。
早乙女 単純な男性にそれを分かってもらうには,それなりの努力が必要じゃないのかな。逆差別的発言になってしまいますけど。
針間 そこで問題解決を面倒にしているのは,論理的に冷静にそれを説明する必要はなくて,イライラしているんだというのをポンとぶつけて,夫が言い返してケンカしていくなかで問題解決の妥協点を見つければいいんだろうけど,ところが男性のジェンダー反応パターンとして,怒りに対しては黙って受け止めるという(笑),それがあって問題解決を長引かせるわけです。
早乙女 性的な関係を含めたコミュニケーションも,そうですねえ。女性側からも言えばいいじゃないと思うけど,言わない。それがすごくもったいない。
早乙女 子育て期からずーと引き続いているんですよね。診察室で「避妊方法とか,大丈夫なんですか?」と聞くと,「いや,先生とは違いますから。うちは子供ほしいときしか,しませんから」って言われて。
荒木 中高年の問題をやっていると,老年期に入ってもセックスしましょうなんて全然思いませんけれど,老人ホームでの事例をみたり聞いたりすると,やっぱりセクシュアリティのことは癒しになるんだろうと思う。
老人ホームのなかで,家に帰りたいと言い続けていたおばあちゃまが,そこで好きな男性ができると,そういうことをピタリと言わなくなって男性のベッドにせっせと通ったんです。肌の温もりとかは,癒されるものがすごくあると思う。そうしたふれ合いが特に老年期は必要で,だから老年期になってもスキンシップは残しておきたい。
今度の調査でも,性交渉以外で身体的なふれ合いがありますかと聞くと,3割は全然なくて,ふれ合いのなかで一番多かったのは,肩をもむとかマッサージ。それが4割ぐらいありましたかね。
編集部 中高年のよりよい性というかーー別にインターコースを指すわけではありませんが,よりよい関係性を少しでも実現するにはどうしたらいいのか。あるいは,それは無い物ねだりなのか(笑)。最後にそのへんのお話しをお願いします。
荒木 男性のほうの意識の変革が必要だと思う。男性のほうがインターコースにこだわっていると思うんです。それがないと女性も満足できないと思っていたりとか。
もっとバラエティのあるふれ合い,それが性なんだと意識を変えていかないと男性自身だって辛いでしょうし広がりをもてない。
ぼくの知っている人々というのは主として,セックスができない人か離婚したい人という方々なんですが,先ほどの話のように,夫婦のそれぞれがどちらか一方の見方しかできない。
いままで性に対する意識の違いがいろいろ語られてきましたが,その裏返しとして,ダブルスタンダードというか,女性側のスタンダードを女性がもっている。そのために女性から性の話をするべきでないとか,女性は受け身であるべきだとか,そうした価値観・考え方を女性も,そして男性ももっている。それを解決するにはーーいずれにしても遠い道なんですが,性に限らず二人で話し合っていくという地道な方法しかない。
日々の小さな積み重ねをしていないと,互いの不満や怒りがセックスに対してもいい方向にはいかないでしょうから,男性に限らず両方の考え方・コミュニケーションが大切だと,あえて言わせていただくわけです。
早乙女 いろんな段階があっていいと思うんです。性的な接触をどこに求めるかというと,まず目と目を合わせる。お互いを認識する。夫婦間で本当にすれ違いだと背中で会話しますよね。
そうでなくてまず目と目を合わせる。それから会話をする。そのところで互いに異性として夫婦として,あるいは人間として認め合うことができて,そこでとまるカップルもあるだろうし,それから次の段階としてふれ合う。手を握るなり肩をもむなり,その段階でとまるカップルもあるだろう。そして体力とかいろいろな条件も整ってセックスにいたるかもしれない。
そういうふうに段階的に考えるとどの段階でもいいんですよ。本当に望ましいかどうか分からないけれど,段階が進めば進むほど満足度も高い,かもしれない。
それと,さっきの,もともと壊れているのだから修復するのは無理というのはあっても,遺跡じゃないですけどーーまあ土台を直すのは無理でも見かけだけでも手を入れることはできて,死ぬまで諦めてはいけないと思うんです。
よく言われるのは相手をなくして初めてよく分かると。きっとそうだと思うんですよ。あの時こうしてやればよかったとか。それは辛いでしょうから,いまからでも遅くはない。80歳からでも遅くはないと思うので,諦めないでほしい。それはセックスまでいくのでなくて,ちょっとでも向き合うというのは,いまからでもできるのではないかな。
それとこの際に加えておきたいのは,セックスは月に何回とかいうのは,必ず男性の射精を指しているんですね。それは女性の快感とは関係ないんだといいたい。
女性の快感というのはタッチングからオーガズムというのもあるし,そうなればインターコースはおまけです。男性側からするとやっぱり射精しないと1回にはならないんでしょうが,その違いは認識すべきだし,それをいまの中高年が
性教育というと,おこがましいんですが,性情報というのは中高年の方々に,相手を満足させる,あるいは相手の快感がどういうところにあるのかを知ってもらって,そのためにお互いが愛情をもって接触することができるということで,いいんじゃないのと思っているんです。
精神科として患者さんと対応していて,どうしたらあなたにとって幸せか。いま流行の自己決定というか,その人が自分探しをするわけです。それとの絡みで思いついたんですが,夫婦にとってどういう関係性がいいのかは,ハタが決めることではないわけですよね。
そうすると個人が自分探しをして自己決定するように,夫婦がよーく話し合って,どうやっていくのが二人の幸せなのかーー。
また1つ混乱するのは,情報がありすぎると,“あの人たちはこうらしい,自分たちは違う”とまた不安になってしまう……話が脱線しますけど女性誌なんかで,“こうするといける”なんて記事があると,“いかない私は異常なの?”なんて電話をかけてきたりして,「いかなくても,いいんだよ」特集を組み直すという(笑),そういうことが起こっているので,それを高齢者にやっていいのかが,私には分からないところがあります。
荒木 でも,知らないといけない情報を得ていないし,また夫婦間で,まだちゃんと伝えられていない。それがまだ不十分だということが,今回の調査で出てきていると,いえますよね。

 

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